つつみ鍼灸接骨院
-リンパ浮腫治療患者と多職種を繋いでいくInBody-

機種モデル:InBody S10

は、2020年にリンパ浮腫の専門院として、群馬県前橋市に開院しました。様々な病院と連携し、診療情報提供書を基にリンパ浮腫の保存療法を行いながら、患者自身が毎日のケアを通じて自己管理ができるようになることを最終目標とし、サポートしています。通院・往療の両方に対応しており、外出が難しい高齢者や終末期の患者も対象となります。

院長の野田 雅美さんは、あん摩マッサージ指圧師、柔道整復師の国家資格を取得後、2009年に野田鍼療院を開院しました。その後、リンパ浮腫セラピストとリンパ浮腫療法士の資格を取得し、2020年にリンパ浮腫に特化したつつみ鍼灸接骨院を開院しました。

▲ 野田 雅美 さん

野田さん:
「1988年にあん摩マッサージ指圧師、1989年に柔道整復師・はり師・きゅう師の国家資格を取得しました。ある時、がんの手術後に両下肢で浮腫みが生じた男性の患者様をご紹介いただきました。実際にその患者様とお会いしてお話を伺ったところ、陰部にも浮腫みがあるとご相談いただきました。しかし、そのような症状は当時の私では対応できず、リンパ浮腫に対する保存療法を行っている周辺の数少ない医療機関を調べましたが、見つけても予約は2年先という現状で、結局その患者様にはどこの病院もご紹介できませんでした。初対面の私に陰部浮腫の話までしてくださった患者様の期待に応えることができなかったと、非常に残念な気持ちになったことを今でも鮮明に覚えています。この出来事があった際にリンパ浮腫療法士の存在を知り、患者様の期待や悩みに応えたいという想いから、資格を取得することを決めました。」


リンパ浮腫とは?

リンパ浮腫とは、リンパ節切除 (リンパ管機能低下・閉塞) や放射線療法後遺症などにより、リンパ管やリンパ節が圧迫され、リンパの流れが阻害されることで生じる浮腫みです。血液は通常、心臓のポンプの働きにより動脈を通って各組織を巡り、静脈を通って心臓へと戻ります。この時、一部の血液は毛細血管から滲み出てリンパ液となり、リンパ管を通って心臓に向かって一定方向に流れます。この流れが何らかの原因で滞り、浮腫みが生じます。

生まれながらリンパ管の欠損や詰まりがある原発性 (一次性) と、がんの手術などをきっかけにして発症する続発性 (二次性) の二つに分けられます。割合で見ると続発性が8割を占めており、ほとんどが子宮がんや乳がんなどの女性特有のがん手術後に発症します。また、原因不明の原発性においても女性の発症が多いため、リンパ浮腫患者の9割が女性です。現在、日本におけるリンパ浮腫の患者は10万人以上と言われており、今後も増加すると見込まれています。

野田さん:
「続発性リンパ浮腫の原因のほとんどはがん治療です。医療の進歩に伴い、リンパ浮腫患者様も年々増えてきていますが、治療後全員がリンパ浮腫に移行するわけではありません。一時的に浮腫む場合もありますし、何十年も経ってからリンパ浮腫と診断される方もいらっしゃいます。しかし、放置してしまうと滞ったリンパ液が脂肪に変わり、リンパ管の壁がさらに厚くなることで悪化してしまうため、どの病気でも一緒ですが早めに医療機関を受診することが何より大切です。」

リンパ浮腫の治療方法は、形成外科で行う手術などの外科的治療と、症状の軽減や外科的治療の効果を高めるための保存療法があります。主に保存療法を行っていますが、つつみ鍼灸接骨院では他にも、浮腫みの合併症で生じる腰や膝の痛み・しびれなどにも対応しています。また、リンパ液の貯留や逆流を防ぐため、患部を圧迫して使用するオーダーメイドの弾性着衣も提供しています。

▲ リンパ浮腫の保存療法で使用する弾性着衣

野田さん:
「当院では、主に続発性リンパ浮腫患者様に対し保存療法を行っています。保存療法とは、圧迫療法・ドレナージ・スキンケア・圧迫した状態での運動・生活指導の五つを複合的に行うことを指します。これらのうち、一つでも欠けたら保存療法とは言えません。来院された際に、マッサージによってリンパ液を流すドレナージを行い、患部を圧迫するための弾性着衣をオーダーメイドで提供していますが、スキンケア・運動・生活習慣の注意点などはご自宅でも継続していただく必要があります。もちろん指導は行いますが、セルフケアを継続してもらえるよう、個人のライフスタイルに合わせたアドバイスが必要です。何より患者様の意識を高めるためには、私たち医療従事者が新しい知識を常に持ち、提供することが大切だと考えています。私も、学会やセミナーなどには積極的に参加して、最新の情報を患者様にお伝えするようにしています。また、少しでも分からないことや迷うことがあれば、気軽に電話で相談していただくようお声掛けしています。」


通院・往療のどちらにも対応できるInBody S10

InBodyは、患者の状態や治療の経過観察、弾性着衣を選択する際のスクリーニングツールとして活用されています。

▲ 持ち運びできるバッグに収納されているInBody S10

野田さん:
「患者様の状態を評価するにあたり、一般的にメジャーでの周囲径測定を行っていますが、メジャー採寸は測定担当者によって誤差が生じやすい不安定な採寸方法という印象です。一方、InBodyは電極を4カ所に装着するだけで部位ごとに水分量が測定でき、また、測定者による数値のぶれもなく信憑性が非常に高いです。また、当院では患者様のご自宅や介護施設へ往療することも多く、エコー装置は持ち運び可能なものを活用しています。InBody S10も同様に持ち運びができますので、場所を問わず院内と同じ測定・評価ができるという点で導入を決めました。InBodyは、体水分量を数値で可視化できるので、患者様の大きな安心材料になっていると感じます。」

ホームページを見た方や知人からの紹介、他の病院でリンパ浮腫と診断された多くの患者がつつみ鍼灸接骨院を訪れます。年代は20~90代と幅広く、リンパ浮腫の主な原因である婦人科がんや乳がんを経験した女性がほとんどです。

初検では、まずエコーで水分が貯留している箇所を探ります。水分が貯留しやすい箇所は主に腕や脚ですが、乳がん患者の場合胸や背中、脇などでも浮腫みが見られます。こうした本人が気づきにくい場所の浮腫みも見逃さず、かつ患者の負担にならないよう短時間で観察します。エコーの後は、InBody測定とメジャーによる周囲径を計測し、結果を基に現状の説明と今後の方針を相談します。

▲ InBody S10はベッド上にて測定

野田さん:
「検査中は弾性着衣を外しますが、立位姿勢の状態のまま静止していると、短時間でも皮膚に変化が生じてしまう方がいらっしゃいます。実際に、10秒ほどで皮膚が真っ青になってしまう方もいるほどです。ですので、エコーやInBody測定は必ずベッドに寝た状態で行います。InBodyは、体水分が安定した状態で正確に測定するため、測定前に10分間安静を取りますが、その間に問診を行います。InBodyをはじめ、様々な結果をもとに今の状態をご説明し、その上でどのような施術を行っていくか計画を立てます。ご高齢の方は特にですが、初検時は必ずメモをご持参いただき、今後の施術内容や方針を記録してもらうようご案内しています。リンパ浮腫は、適切な対処をしなければすぐに悪化してしまうケースが多いため、院内だけでなくご家庭でもケアを継続していただくことが大切です。」


リンパ浮腫の経過評価に欠かせないInBody

InBodyは、1回2,200円で測定できますが、弾性着衣をオーダーメイドで作成した方にはInBody測定を1回分プレゼントしています。

野田さん:
「弾性着衣は、毎日使用しているうちに圧力が劣化してしまうため、半年を目安に買い替えをお勧めしていますが、このタイミングでInBody測定もお勧めしています。当院の患者様は、施術以外にもセルフケアを継続し頑張っている方が多く、ほとんどの患者様が良い方向に改善されています。患者様にとってInBodyは、日常的に行っていることの確認できるテストのような感覚らしく、測定前はすごく緊張される方もいらっしゃいます。それだけ、InBodyの測定値が非常に精度の高いものであるということを皆さんもご存知ということですし、私自身もInBodyの結果は具体的な数値として出ますからね、と患者様にお伝えしたりします。」

▲ InBodyの結果用紙を見せながら患者様に状態をご説明


活用項目① ECW/TBW

InBodyでは、人体を体水分量・タンパク質量・ミネラル量・体脂肪量の四つに分けて測定しています。このうち、体水分量+タンパク質量+骨外ミネラル量(ミネラル量のうち、骨から溶け出して血中に存在するミネラル量)の合計を 「筋肉量」 としています。そのため、体水分量の増減に伴って、筋肉量も一緒に増減します。浮腫みが生じている状態で測定を行うと、筋肉内に余分な水分量が蓄積していることから、筋肉量が多く算出されます。この場合の筋肉量の数値は、純粋な筋肉を表しているわけではないため、数値での評価はできません。

▲ 浮腫が生じている状態で測定したInBody結果用紙

この場合、浮腫みの有無や重症度の参考になる項目が「細胞外水分比(ECW/TBW)」です。ECW/TBWとは、体水分量(TBW)のうち、細胞外水分量(ECW)が占める割合を数値で表したものです。健康的な状態であればECW:TBW=38:100に近しい割合で体水分量が存在し、それを数値で表したECW/TBWは0.380前後を一定に保つことから、標準値は0.380で標準範囲は0.360~0.400とされています。浮腫みによって生じる余分な水分は、主にECWとして蓄積されることから、リンパ浮腫などの浮腫みを伴う患者では症状が悪化するにつれてECW/TBWが0.390、0.400、0.410・・・と上昇していきます。

治療を経て余分な水分が抜け、浮腫みの改善が見られることで水分量、筋肉量とECW/TBWの数値は低下していきます。このECW/TBWの数値の変化を追うことで、浮腫みの経過や治療の効果を確認できます。野田さんも、患者のInBody測定結果のうち、このECW/TBWをリンパ浮腫の程度を示す指標として評価に活用しています。

野田さん:
「患者様には、InBodyを含め様々な結果を説明していますので、混乱しないように可能な限りシンプルに伝えることを心掛けています。InBodyの結果の中では、ECW/TBWに着目してお伝えしています。当院には重度のリンパ浮腫患者様が多く、ECW/TBWはほとんどの方が0.400を大きく超えているので、やはりリンパ浮腫の重症度とInBodyのECW/TBWは一致していると感じます。患者様には、インボディさんからいただいた、筋肉量とECW/TBWを合わせた評価方法の表を見ながら、両方の数値が下がったら良い変化だとお伝えしています。何度か測定されてInBodyに慣れてきた患者様は、ご自身で結果を見て評価される方もいらっしゃいます。」

▲ 筋肉量(水分量)とECW/TBWの増減を併せて見る評価方法

InBodyの結果には、見た目や本人の感覚などでは分からない些細な変化も反映されるため、説得力のある客観的な数値として患者へのフィードバックに活用できます。

Aさんは両下肢で浮腫みが見られる方で、1回目のInBody測定から6か月後に、他院で外科的治療を行いました。状態は改善したはずですが、Aさんご自身は脚が手術前よりも太くなったと感じており、浮腫みが悪化してしまったのでは?と思っていました。

▲ 2022.10

▲ 2023.04

しかしInBodyを測定してみると、筋肉量が増加しECW/TBWは低下していることが確認できました。手術と毎日のケアによって浮腫による余分な水分が抜け、純粋な筋肉が増加したことがInBodyで明確に示されています。

野田さん:
「Aさんは、術後1ヶ月で来院された時に脚が太くなったことを気にされ、浮腫が悪化したと仰っていました。そのためInBody測定をすると、脚が太くなった原因は浮腫の悪化ではなく、筋肉の増加によるものだと分かったのです。ECW/TBWの数値もきちんと下がったことを確認すると、あれだけ不安そうにしていたAさんもすごく安心して、改善したことを喜ばれていました。InBodyは見た目や主観では分からない変化を反映してくれるので、説明する側の私たちにとっても、患者様にとっても、説得力のある欠かせない評価ツールです。」


活用項目② 部位別水分量

リンパ浮腫の経過を観察する上で重要な情報が、「部位別水分量」です。InBodyは人体を右腕・左腕・体幹・右脚・左脚の五つの部位に分けて測定しており、部位毎の体水分を正確に測定できます。リンパ浮腫は全身同じ程度で浮腫が生じるわけではなく、部位によって経過も異なります。部位別水分量を観察することで、より細かく患者様の状態の変化を評価できるので、水分管理には欠かせない項目の一つです。

野田さん:
「当院では、静岡県立静岡がんセンター再建・形成外科の安永能周先生が発表された、浮腫改善率という指標¹⁾を活用して患者様にフィードバックしています。浮腫改善率は、InBodyの測定結果のうち、部位別水分量の数値から算出でき、初検時と比較してどのくらい余分な水分が抜けて浮腫が改善してきたのかが分かりやすく評価できる指標です。浮腫が生じている側とそうでない側を比較した指標なので、片側性リンパ浮腫の患者様のみに活用しています。」

Bさんは、初検時に左脚に強い浮腫みが認められました。しかし、つつみ鍼灸接骨院での施術の他にも、日頃のセルフケアを継続して取り組んでいたため、経過が非常に良く、順調に浮腫の改善が見られています。InBodyの結果でも、左脚の水分量が2.27L減少し、ECW/TBWも大きく低下していることが確認できます。これは、筋肉量(水分量)とECW/TBWを併せた評価に当てはめてみても、どちらも減少している良い変化と言え、余分な水分が抜けたことが明確に示されています。

▲ 2023.02

▲ 2023.05

野田さん:
「浮腫改善率が100%になると浮腫が完全に改善されたことを意味することになります。Bさんの浮腫改善率は(2.27÷3.87×100=)58.7%と、3ヶ月で大きく改善しています。減少した水分量(L)よりも、%での評価の方がリンパ浮腫の経過が分かりやすく追えるため、伝える側としても便利ですし、患者様にもご好評いただいています。」


リンパ浮腫分野の発展の鍵となる多職種連携

近年、リンパ浮腫に関係する学会や研修会、講習会の議題として多く挙げられるのが、「多職種連携」です。リンパ浮腫の治療やケアを一つの医療機関で行っている施設はまだ数少なく、複数の医療機関で一人の患者をサポートしていかなくてはなりません。この時、各施設そして多職種による情報共有と連携が必須になりますが、今はその難しさが第一の課題として挙げられています。野田さんは、その課題を解決するツールの一つとして、InBodyが非常に有効であると考えています。

野田さん:
「治療院での施術は、医師からリンパ浮腫の診断を受け、施術の許可をいただいた患者様にしかできません。また、急に感染症にかかったり、皮膚の変化が起きたりとリンパ浮腫の症状は様々ですので、病院や介護施設など、様々な医療機関・施設との連携は常に必須です。しかし、患者様の状態を評価する方法がそれぞれの施設で異なっている現状が、連携を難しくしているのではないかと思います。現在はメジャーでの患部周囲径測定が基本的な評価方法とされていますが、計測する位置の規定は現在はなく、測定者や測定位置による誤差が大きいので、共通の評価方法とするには信憑性に欠けます。ですがInBodyなら、電極を決まった位置に装着するだけなので、測定条件を統一すればどの施設で測定しても誤差は生じません。リンパ浮腫のスタンダードな評価方法としてInBodyが広まって、基準を統一できれば多職種連携が非常にスムーズに行えると思います。」

野田さんは今後、つつみ鍼灸接骨院の通院患者に限らず、群馬県内ならびに全国のリンパ浮腫患者に対してInBodyを周知していくため、新たな試みを始める予定です。

野田さん:
「InBodyは短時間で患者様の負担も少なく、数値による分かりやすい評価が得られるという点が非常に魅力的だと思います。リンパ浮腫の状態や程度を、数値で自分でも観察できるという安心感は、永続的に施術していかなければならない患者様にとって何事にも代えがたいと思います。ぜひこのInBodyでの評価を多くの方に体験していただきたく、他の医療機関もしくは治療院で保存療法を継続されている方に限り、当院でInBody測定のみの対応も行う予定です。表面からではなかなか判断できないリンパ浮腫の評価にお役立ていただけると思います。ぜひお気軽にお問い合わせください。」

参考文献
1. 安永 能周, 生体電気インピーダンス法によるLVAの評価とリンパ浮腫発症のスクリーニング, 形成外科. 2023;66(9):1029-1037