ひまわり歯科 :前編
-地域の健康をサポートする1.5次歯科診療所-

機種モデル:InBody S10

広島県安芸郡海田町にある、は1999年の開業以降、多くの患者が利用する地域に根付いた診療所です。22台もの診療台が並び、100名以上のスタッフ(歯科医師40名・歯科衛生士30名・歯科助手2名・歯科技工士3名・受付7名・看護師2名・管理栄養士3名・保育士10名・器材管理2名・事務10名)が在籍する当施設は、一般的な歯科クリニックとは一線を画しています。一般歯科診療では、各歯科医療分野に精通した歯科医師による専門医療や、長期にわたるメンテナンスを提供している他、管理栄養士による栄養サポートや通院が難しい方向けに訪問診療も行っており、通常の歯科医院の枠に留まらず、様々な角度から患者そして地域の健康をサポートしています。
※2021年実績(年間はどちらも延べ人数)【外来患者】1日約200名、年間約47,000名 【訪問診療】 年間約1,900名


多機能を備えた1.5次歯科診療所を目指して

ひまわり歯科は私達が普段よく利用する歯科と比べて、診療台数・在籍する医師や職員の人数・施設の敷地面積・取り組む事業内容と全ての規模がとても大きいです。その理由は、1.5次歯科診療所(多機能地域支援型歯科診療所)を目指しているところにあります。医療機関は1次/2次/3次と分類することができ、1次医療機関は地域の歯科クリニック、2次医療機関は都道府県の歯科センターや医師会病院、3次医療機関は大学病院をそれぞれ指します。1.5次歯科診療所は最近の新しい考え方で、様々な専門医や多職種が勤務しており、2次医療・3次医療ほど高度ではないが、より専門的な治療も行える地域の歯科クリニックを指します。

▲ (左から) 吉本 はるさん、村田 尚道先生

ひまわり歯科で訪問診療を担当されている村田 尚道先生は大学で摂食嚥下障害について学んだ後、食べることに困っている高齢者や小児への摂食機能療法を専門として活躍しています。2017年からひまわり歯科に携わっています。「食べれる外来¹⁾」という小児向けの摂食嚥下外来を担当しており、訪問診療では小児・高齢者・障害者など通院が難しい様々な患者を訪問して診察を行います。
1)「食べれる外来」は摂食外来・摂食嚥下外来とも呼ばれ、食べることに問題を抱えた方や発達が遅れて嚥下が上手くできない小児に対して、お口の検査や機能訓練を行う外来です。

村田先生:
「近年、1.5次歯科診療所を目指す歯科が全国的に少しずつ増えています。私達の目指す1.5次歯科診療所は、一般的な歯科治療に加えて、障害をお持ちの方やご高齢の方など通院が難しい方への訪問による支援、地域のフレイル予防教室、子どもの健全な成長へのサポートなどを多職種で取り組める歯科です。歯科医の労働環境も多様化しており、一つの診療所に多くの歯科医が所属するようになってきました。ひまわり歯科も例外でなく、それぞれの専門分野を活かすことで幅広い症例に対応できるように、歯科技工士・看護師・管理栄養士・保育士等も加わって、多職種連携による1.5次歯科診療所を目指すようになりました。」

歯科恐怖症や障害をお持ちの方で治療がスムーズに行えない場合には、大きな病院で用いられる鎮静全身麻酔を用いて治療ができるのもひまわり歯科の特徴です。他にも、ワイヤーによる矯正だけでなく患者への負担も考慮したマウスピースによる矯正も行っています。金属を用いていないセラミックの被せもので治療する際、外部に委託して被せものを作成すると、遠方から来る患者は再来院が必要です。しかし、ひまわり歯科は院内で被せものを製作できる環境を整備しているため、一日で製作から装着まで対応できます。

吉本 はるさんは2021年の10月からひまわり歯科に勤務する管理栄養士です。大学卒業後は、総合病院の精神病棟で患者の栄養指導に携わっていました。薬物療法によって日々大きく変化する患者の状態を目の当たりにしては発症する前の一次予防の大切さを痛感していました。ちょうどその頃、ひまわり歯科の方との出会いで歯科と栄養が密接に関わっていることを初めて知り、歯科での一次予防に取り組んでみたいとの想いから現職に至ります。

吉本さん:
「当院内には託児所が設置されており保育士も雇用しています。小さいお子さんがいらっしゃる親御さんも治療の間に託児所を利用することで安心して来院いただけます。託児所を有する歯科は全国でも珍しく、おそらく当院が全国で初めてではないかと思っています。託児所は当院スタッフのお子さんも預けることができるため、働きやすい環境作りとしても一役買っています。」

▲ ひまわり歯科の3階に設置されている託児所


歯科で活躍する医療用InBody

近年、栄養相談を行う歯科も増えてきたことで歯科へのInBody導入が増えつつありますが、ひまわり歯科では医療用であるInBody S10が2021年1月から導入されています。歯科クリニックでS10を導入している施設は全国でも稀です。

村田先生:
「岡山大学病院でInBody S10を用いてNSTで活動した経験から、ひまわり歯科でもきっと活用できると思い、私から院長先生にInBody導入を提案しました。歯科は食べることに一番近い診療科です。外来で患者様を診ている中で、本当に食事をちゃんと食べられているのか、患者様によっても『食べられている』と感じる量は異なります。InBodyで測定して数値を示してあげることで、私達も評価しやすく、患者様も自分の体を理解しやすくなります。高齢な患者様も多いので、フレイル・サルコペニアの評価にも使えると思いました。」

吉本さん:
「通常の歯科診療では、患者様の歯の痛みや違和感はどうしても主観的な評価となってしまいます。InBodyでも痛みの数値化は難しいですが、患者様の全身の状態を客観的に知ることができるので、健康をサポートする視点を増やすことができます。InBodyはフレイル予防教室・訪問診療・栄養相談・インプラント術前の栄養相談では評価指標の一つとして測定しています。歯科治療・口腔ケアは食事ができるようになることがゴールではありません。その後の健康を維持・管理するための体成分分析や栄養・食事指導も大切です。InBodyの測定結果があることで、患者様のモチベーションアップにも繋がっています。」

村田先生:
「医療機器の中でもS10を選んだ理由は、測定姿勢が仰臥位・立位・座位の3つから選択できる点です。基本的に、院内で測定するときは立位で測定し、食べれる外来に来られるお子さんや訪問診療で寝たきりの患者様を測定するときは仰臥位で測定しています。訪問診療で車いすの患者様を診ることもあるので、その場合は座位で測定しています。加えて訪問診療での活用も考えていたので、簡単に持ち運びできるサイズであることからもS10が適していると思っていました。」

▲ S10の測定姿勢 (仰臥位・立位・座位)

InBodyをはじめとしたBIA機器は測定条件を統一することがとても重要です。ひまわり歯科では測定手順や条件をなるべく統一できるよう、主に村田先生・看護師・管理栄養士がInBodyを操作して測定しています。食後は2時間以上空けて測定することの条件に関しては、患者が来院される時間の兼ね合いで遵守が難しい場合もあるため、食後の経過時間を確認してメモするように徹底しています。

小児を測定するときは泣いてしまったり、緊張から体動が出てしまうこともあるため、測定エラーにならないように姿勢を正したり、スタッフが測定の間だけ優しく押さえるようにするなどの補助が入ります。小児の場合、測定の僅かな時間も喋ることを止められないような子どももいるため、動画や音楽をかけてリラックスしてもらい、その間に測定を済ますこともあります。子どもたちも測定回数を重ねて大きくなってくると、自分から測定の間にじっとしてくれるようになります。フレイル予防教室に来られる高齢者は手足が乾燥している方が多いので、電解ティッシュを使用して測定前に皮膚を湿らせるようにしています。


認定栄養ケア・ステーションの立ち上げ

▲ 高齢者への栄養相談

認定栄養ケア・ステーションとは、日本栄養士会が定めるケア・ステーションで、日々の栄養相談や特定保健指導、調理教室の開催など、食・栄養に関する幅広いサービスを提供しています。老若男女問わず地域の方々への栄養介助の拠点として設けられ、どんな些細な事でも気軽に立ち寄って管理栄養士に相談することができます。地域の方々と管理栄養士の交流の場でもあり、現在は各市町村に一つずつ設置することを目標に全国で356拠点(2021年4月現在)が稼働しています。ひまわり歯科も2020年4月から、認定栄養ケア・ステーションとして活動しています。

吉本さん:
「歯科に管理栄養士が所属しているイメージがまだ全国的にも浸透していません。私自身もひまわり歯科のことを知るまでは歯科と管理栄養士の関わりが想像もつきませんでした。食事はお口から行うことから、歯科治療・口腔ケアと栄養は密接に関係するということ、そしてこの歯科には管理栄養士がいるということに気付いてもらうため、認定栄養ケア・ステーションの活動を始めたと当時の立ち上げメンバーから聞いています。栄養相談を受けられる患者様は、”今から食事制限をかけられて食べられないものが増えてしまう・・・” と恐る恐る来られる方も多いです。しかし、歯科の栄養相談は未病での一次予防に関する内容が多いため、これまで通りに食事を楽しんでいただけるような指導を心掛けています。」

村田先生:
「日本の高齢者の栄養と言うと、生活習慣病に関するイメージが強いですが、低栄養に関する内容は意外とフォーカスされていません。特に、今の高齢者は若い頃から節制と言われ続けたこともあり、低栄養状態が続いた結果、フレイル・サルコペニアになっている方が多くいます。65-75歳の間で節制の考え方を変えて、タンパク質をしっかり摂取して筋肉量の維持・増加させることの大切さを周知していく必要があります。そこで、タンパク質の摂り方などを気軽に相談できる施設を地域に作っていくことを日本栄養士会は目指しています。筋肉量の維持・増加を訴えるためには、もっと認定栄養ケア・ステーションにInBodyを導入していくべきだと思います。」

現在栄養相談に来られている方は、元々歯科治療で通われている中で “最近体重が落ちてきた” “食べても食べても一向に体重が増えない” と何気なく話されたことで、歯科医師から相談があった方が大半を占めています。本人は食べていると思っても、客観的に見てちゃんと食べられているかは分かりません。栄養相談は普段の食事内容の聞き取りから始まります。

吉本さん:
「以前勤めていた病院にはInBodyがなく、栄養相談を行う際は血液検査の結果と併せて普段の食事内容などを聞き取っていました。患者様の状態の判断材料になるものが食事内容しかなかったので、聞き取り内容が少しでも間違っていると、正確に指導することが難しくなるという問題がありました。ひまわり歯科でInBodyを栄養相談に組み込むようになって、患者様も私も今の状態を数値で知れるようになったのが大きなメリットです。私自身も体重のみで評価するやり方は良くないと感じていて、体重に対する筋肉量や体脂肪量の割合によっては体重の評価を誤ってしまうこともあり、体の中身を見ていくことが大切だと思っていました。InBodyを活用することで患者様の体の状態を説明しやすくなりましたし、食事に関する指導内容とも結びつけやすくなったことはとても良かったと思います。」

InBodyの測定結果を説明する際は、測定値が標準値とどれくらい離れているかを全身・部位別筋肉量の項目で確認します。また、筋肉量の重さだけでなく、どこの部位が不足しているかなど発達バランスも一緒に確認します。栄養指導では、握力を測定することもありますが、握力が良くても筋肉量が減少している場合もあることから、総合的に患者の状態を見ることでより的確な診断を行えるように心掛けています。更に、高齢の方は体水分情報、成人の方は体脂肪率を一緒に伝えるなど、患者に合わせて活用する項目も臨機応変に対応します。

▲ 85歳141cm女性の例 (初回と比べて体重は減少しているが筋肉量が増加し、体脂肪量が減少)

吉本さん:
「最近印象的だったのが85歳女性の患者様です。この方も元々は歯科を受診している方だったのですが、最近体重が減ってきているのを心配されていて、体重・筋肉量を増やして日頃の生活を楽にしたいという想いがあり、栄養相談を始めました。最初は月1回の栄養相談でしたが、InBodyを測定しながら栄養状態の改善が見られてきたので、現在は3ヶ月に1回の歯科治療に合わせて栄養相談を行っています。顕著な変化とまではいきませんが、筋肉量が増加し、体脂肪量が減少していることが分かります。今後もまずは今の体成分を維持できるようにサポートしていきたいと思います。患者様も測定結果を見て、今の状態を維持できていることに安堵されています。」

後編では歯科と訪問診療でのInBody活用について伺っています。